相続税の「取得費加算の特例」とは?適用できないケースについても解説

不動産相続時の税金

相続税の「取得費加算の特例」とは?適用できないケースについても解説

相続が発生すると、財産を取得した相続人には「相続税」が課されます。
相続したあとに不動産を売却して利益を得ると、さらに「譲渡所得税」が課されますが、「取得費加算の特例」によって負担を軽減することが可能です。
そこで今回は、取得費加算の特例とはなにか、利用するための要件や適用できないケース、併用可能なほかの税制について解説します。
不動産の相続を控えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続税の取得費加算の特例とは?概要や要件を把握しよう

相続税の取得費加算の特例とは?概要や要件を把握しよう

特例の概要を解説する前に、まずは譲渡所得税に関する基礎知識から確認してきましょう。

譲渡所得税とは

不動産を売却して得た利益のことを「譲渡所得」といいます。
この譲渡所得には、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」が課されます。
譲渡所得税とは、この3つの税金の総称です。
譲渡所得は、以下のように計算できます。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
この計算式からもわかるように、譲渡所得は、売却価格から以下のような必要経費を差し引いて残った利益です。

●取得費…不動産の購入代金と購入のために支払った費用の合計
●譲渡費用…不動産売却をおこなうために支払った費用


取得費や譲渡費用が多ければ、譲渡所得は少なくなります。
譲渡所得税は、譲渡所得に税率を乗じて計算するため、経費を多く計上できれば、税額も抑えられるのです。

取得費加算の特例とは

取得費加算の特例とは、相続で取得した不動産を売却した場合に、相続税を取得費に加算することで譲渡所得税を軽減できる特例です。
この特例を利用するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
相続や遺贈によって取得した不動産であること
取得費加算の特例の対象は、被相続人から相続や遺贈で取得した不動産です。
遺贈とは、被相続人の遺言書に基づいて財産を引き継ぐことを指します。
遺贈の場合は、法定相続人以外の方が財産を受け取ることが可能で、要件を満たせば取得費加算の特例を利用することができます。
相続税が課されている方であること
特例によって取得費に加算されるのは、納税した相続税です。
したがって、相続税を支払っていない場合は、この特例の適用外となります。
相続が開始された日から3年10か月以内に売却していること
取得費加算の特例には、相続税の納付期限から3年という売却期限が設けられています。
相続税の納付期限は、相続の開始から10か月以内です。
つまり、この特例は、被相続人が亡くなってから3年10か月を過ぎると利用できないため、早めに売却のスケジュールを立てて行動することが大切です。

取得費加算の特例の計算式

取得費に加算できる相続税は、以下の計算式で算出できます。
取得費に加算できる金額=納めた相続税額×(不動産の売却価格÷相続した財産の課税価格の総額)
たとえば、財産の総額が4億円で、不動産を2億円で売却したとします。
相続税を1億円支払っていたのであれば、取得費に加算できる金額は、1億円×1/2=5,000万円となります。

相続税を取得費加算の特例に適用させることができないケース

相続税を取得費加算の特例に適用させることができないケース

取得費加算の特例を利用すると、譲渡所得を抑えることができるため、譲渡所得税の負担を軽減できることを前章で解説しました。
しかし、被相続人から引き継いだ不動産を売却した場合であっても、特例を適用させることができないケースもあります。
そこで次に、取得費加算の適用外となるケースについて解説します。

生前贈与された場合

被相続人が財産を渡す方法として、相続以外に生前贈与という手段があります。
被相続人の財産を引き継ぐという意味では同じですが、相続と贈与は財産を引き継ぐ時期と課される税金が異なります。
相続
相続とは、被相続人が亡くなったあと、その方の財産を引き継ぐことです。
そして、引き継いだ財産に対して相続税が課されます。
贈与
贈与とは、被相続人が生存中に、財産を受け取る方との同意のもと、財産を引き継ぐことです。
受け取った財産に対して贈与税が課されます。
そもそも取得費加算の特例は、相続税を取得費に加算して譲渡所得税を抑える特例であるため、贈与については適用されません。
ただし、贈与がおこなわれてから3年以内に贈与者が亡くなった場合には、「生前贈与加算」というルールがあり、相続税の対象になります。
その場合は、取得費加算の特例が利用可能です。
また、生前に贈与された財産を相続発生時まで先送りする「相続時精算課税制度」を利用した場合も、相続税の対象となるため取得費加算の特例が適用されます。

夫婦間で相続した場合

被相続人の配偶者には、配偶者の税額の軽減という特例が適用され、1億6,000万円まで相続税が課されません。
先述のとおり、取得費加算の特例は、相続税を納めた方が対象です。
相続税が1億6,000万円以上になるケースは少ないため、取得費加算の特例を利用しないケースがほとんどです。

相続税の取得費加算の特例と併用可能な制度

相続税の取得費加算の特例と併用可能な制度

譲渡所得税を軽減できる特例はほかにもありますが、取得費加算の特例と併用できるのは、以下の3つです。

特定のマイホームを買い換えたときの特例

特定のマイホームを売却して代わりのマイホームに買い換えたとき、条件を満たせば譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べることができます。
ただし、買い替えたマイホームを将来売却するときにまとめて課税されるため、非課税になるわけではありません。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除を受けられます。
ただし、先述した買い替えの特例との併用はできません。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続する土地の評価額を、一定の面積までの部分について減額できる制度です。
評価額を下げることで、相続した土地に課される相続税を大幅に削減することが可能です。
この特例では、相続した土地の用途によって、減額できる割合と土地面積の上限(限度面積)が定められています。
たとえば、被相続人が住んでいた自宅が建っている「特定居住用宅地等」に該当すると、330㎡までの面積について80%減額されます。
配偶者が相続した場合は無条件で適用されますが、子などほかの親族が相続した場合は、申告期限まで居住し、かつ所有していることが条件です。
なお、不動産を相続する際、その家が空き家になっているケースも少なくありません。
相続した空き家を売却した際にも、譲渡所得から最高3,000万円まで控除を受けられる特例があります。
これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
しかし、この特例と取得費加算の特例は併用できません。
どちらを選択するかは、取得費に加算できる相続税が3,000万円を超えるかどうかがポイントです。
多くの場合、相続した空き家の3,000万円控除の特例を利用したほうが、控除できる金額が大きくなります。
ただし、実際にどちらの特例を利用するかは、それぞれの特例で控除できる金額を計算して確認したうえで判断しましょう。

まとめ

相続した不動産を売却した際には、取得費加算の特例を利用することで、譲渡所得税を軽減できる場合があります。
この特例は、あくまで相続税を支払った方が対象であるため、贈与を受けた場合や、配偶者の減税措置により相続税が課されていない方は適用外です。
ほかにも譲渡所得税を軽減できる特例があり、併用可能なものもあるため、積極的に特例を活用し、節税に繋げましょう。


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